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日刊資源新報

廃プラスチック

廃プラスチックの市場規模とリサイクル

回収された廃プラスチック

回収された廃プラスチック

国内のプラスチック生産量は、1997年の1,521万トンをピークに減少しているが、ここ数年は横ばいで推移しており1,000万トンとなっている。このため、廃プラスチック総排出量もここ数年は横ばい傾向をたどっており、900~1,000万トンの間を推移している。

こうしたなか、我が国の廃プラスチック有効利用量については、ここ10年で大きく数量を伸ばし、2000年には500万トン未満であったものが、700万トンを超える量となっており、有効利用率は80%程度にまで達している。このことは、容器包装リサイクル法の施行に伴い、一般廃棄物プラスチックからの再生利用やケミカル・サーマルリサイクルなどが進展したことによるものである。また、廃プラスチックのリサイクル手法としては、マテリアルリサイクルが200万トン程度、ケミカルリサイクルが40万トン程度でここ数年頭打ち傾向を示す一方で、固形燃料化や廃棄物発電、熱回収などといったサーマルリサイクルは500万トン規模にまで拡大を見せているのが現状だ。

マテリアルリサイクルの進展も海外市場への依存度高い廃プラスチック

マテリアルリサイクルされる廃プラスチックは2000年の約140万トンから増加傾向を示してきたが、ここ数年は200万トン程度で頭打ち傾向を示している。この200万トンのマテリアルリサイクル量の内訳としては、使用済み製品からのものが6~7割程度、生産・加工ロス品が3~4割程度となっており、樹脂別ではPET樹脂が50万トン(2012年)ほどと最も多く、次いでPE、PP、PVC、PSなどとなっている。また、マテリアルリサイクルのうち、再生製品となるものの比率は低く、その多くが再生材料として流通しているのが現状である。

海外の廃プラスチックリサイクル

海外のリサイクル

ただ、この廃プラスチックのマテリアルリサイクルされたもののうち、国内で利用されるものはごく一部に限られているのが現状だ。2012年の実績では、マテリアルリサイクルのうち8割を超える170万トン近くが海外へと輸出されているのが現状だ。この背景には、再生樹脂の強度や純度などの特性から国内での用途が限られてしまうこと。その結果として、一定程度の品質で問題のない製品の生産拠点のある海外、主に中国に流れていくといった構造的な面が存在する。

こうしたことから廃プラスチックは、他の再生資源と比較しても海外(主に中国)の需要にそのほとんどを依存するという極めて不安定な構造によってしか成り立たざるを得ないのが現状である。ただ、今後、海外での様々な規制導入や経済発展に伴い、海外への輸出がいつまで続くのかは不透明である。2004年、日本から持ち込まれた違法廃プラスチックの問題で、中国が日本産の廃プラスチックの輸入禁止措置をとり、業界に大きな衝撃を与えたことは記憶に新しいところである。こうしたことから、廃プラスチックの安定したマテリアルリサイクルの仕組みを構築するには、国内での利用の拡大をいかに進めていくかが大きな課題の1つと言えよう。

※数値データはいずれも一般社団法人プラスチック循環利用協会資料による

海外流出の続くPETボトルでは高品質化による国内循環の動きも

回収PETボトル

回収PETボトル

マテリアルリサイクルされる廃プラスチックのうち、最も市場規模の大きいPETボトルについては、容器包装リサイクル法の枠組みに基づき、国内でリサイクルするためのインフラが存在するにも関わらず、国内需要の低迷と中国での繊維向け需要増などを背景に依然として半数以上が海外に輸出される状況が続いている。このため、国内の再資源化企業は、原料となるPETボトルが集められずに事業撤退などに追い込まれるところも出ているのが実情だ。

高品質な再生PETフレーク

高品質な再生PETフレーク

こうしたなかで、国内での安定したPETボトルの循環利用を図るべく、一部企業によって従来に比べ低コストで高品質な再生原料を製造、ボトルtoボトルなどの高度な要求に応えらえるリサイクル手法(メカニカルリサイクル)の導入が進められた。PETボトルのリサイクルについては、これまでも高品質化を図る技術はあったが、コスト面で課題もあり、海外企業との競争で勝つことは難しかった。新たに導入されたメカニカルリサイクルによるボトルtoボトルの仕組みは、世界でも初の取り組みであり、今後のPETボトルリサイクルの大きな流れの1つになることが期待されている。

ただ、現段階では年間排出されるPETボトル全てを国内で循環させていくというのは難しいというのが現状である。こうした高品質な再生原料は今後、国内での需要拡大が見込まれるが、輸出や従来向け用途とのバランスを取りながら、安定した再資源化システムの構築が求められるところとなっている。